
むっとした熱気の中に混じる、スパイスとハーブの香り。遠くで聞こえる寺院の鐘の音や、活気あふれるバイクのエンジン音。日本での日常を抜け出し、東南アジアの空気に包まれる瞬間は、何物にも代えがたい高揚感があります。
限られた休暇を使って旅に出るなら、失敗は防ぎたいものです。「微笑みの国」として観光インフラが整ったタイか、近年目覚ましい発展とノスタルジーが共存するベトナムか。どちらも魅力的な国だけに、迷ってしまうのは当然です。
この記事では、2025年11月時点の最新情報をもとに、両国の特徴を徹底比較します。初めてでも安心して楽しめる選び方から、時間を有効に使って両国を巡る「周遊」の可能性まで、あなたの旅のスタイルに最適なプランをご提案します。

タイ国政府観光庁が認める「タイランドスペシャリスト」の資格を持ち、渡航歴50回以上、現地滞在10年以上を誇る「まさよし」が、本記事を執筆しました。長年の経験と現地で得た生きた情報に基づき、最新かつ正確な情報をお届け。タイの文化、食、マナーまで、あなたのタイ旅行を安心で充実したものにする専門家として、信頼性の高い情報提供に努めています。
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この記事でわかること
- 自分に合う国選び
「エンタメのタイ」か「癒やしのベトナム」か、旅のスタイルに合わせて後悔のない選択ができます。 - ベストシーズンと気候
雨季と乾季の違いを理解し、天候に恵まれた快適な旅行計画を立てられます。 - 予算と物価の目安
食事や移動にかかるリアルな費用を知ることで、予算オーバーの不安を解消できます。 - 食文化の違い
辛い料理が得意か苦手かによって、より満足度の高いグルメ体験を選べます。 - 安全な移動手段
ぼったくりを防ぐ「Grab」の活用など、現地で失敗しない移動テクニックがわかります。 - トラブル回避術
よくある詐欺やスリの手口を事前に知ることで、現地での安全性が格段に高まります。 - トイレ・チップ事情
ガイドブックに載っていない細かい疑問を解消し、現地でスマートに振る舞えます。 - 周遊という選択肢
LCCを使った効率的な移動で、一度の休暇で両国の魅力を満喫するプランも検討できます。
👇このあとの目次から、気になる項目をすぐにチェックできます。ピンポイントで知りたい情報がある方は、ぜひ活用してください。
まず結論:タイとベトナム、あなたに向いているのはどっち?
限られた日程の中で満足度の高い旅にするためには、ご自身の旅の目的と優先順位を明確にすることが大切です。ここでは、旅のスタイル別にどちらの国がより適しているかを、ズバリ解説します。

初めての東南アジア旅行では、「移動のしやすさ」を重視してタイを選ぶ人が多く、リピーターや特定の目的(雑貨・食)がある人がベトナムを選ぶ傾向にあります。どちらを選んでも、事前の配車アプリ(Grab)のインストールは、現地での移動ストレスを劇的に減らす鍵となります。
「初心者・快適重視・エンタメ派」はタイ
初めての海外旅行や、英語に不安がある方にはタイがおすすめです。首都バンコクは高架鉄道(BTS)や地下鉄(MRT)が発達しており、タクシーを使わなくても主要な観光地やショッピングモールへスムーズに移動できます。
また、高級ホテルからゲストハウスまで宿泊施設の選択肢が豊富で、日本語対応が可能な病院やサービスも充実しています。「言葉や移動の不安なく、リゾートやナイトライフ、ショッピングを全力で楽しみたい」というエンターテインメント性を重視する方に最適です。
「街歩き・雑貨・ヘルシー食派」はベトナム
フランス統治時代の名残を感じるコロニアル建築や、色鮮やかなランタンが揺れる古い街並み。そんな風景の中で、可愛い雑貨を探したり、カフェでゆっくり過ごしたい方にはベトナムが心地よいでしょう。
食事は野菜をふんだんに使ったマイルドな味付けが多く、日本人の口に合いやすいのが特徴です。「派手なアトラクションよりも、街の雰囲気を味わいたい」「辛い料理は苦手だけれど、現地の食を楽しみたい」という方には、ベトナムが深い満足感を与えてくれます。
欲張りなあなたへ:LCCで叶う「周遊ルート」の魅力
「どうしても選べない」という場合は、両国を一度に巡る周遊旅行も現実的です。バンコクからハノイやホーチミンへは、飛行機で約1時間半程度。LCC(格安航空会社)を利用すれば、時期によっては片道数千円〜1万円程度で移動可能です。
例えば「前半はバンコクで都会の刺激とショッピングを楽しみ、後半はダナンのビーチリゾートで癒やされる」といったプランも可能です。日程に5日〜1週間程度の余裕があれば、両国の良いとこ取りをするのが、実は最も満足度の高い選択かもしれません。
タイ・ベトナムの入国条件と基礎データ比較(2025年11月現在)
旅の計画を立てる上で、最初確認しておきたいのがビザや気候などの基本情報です。2025年11月現在の公的なルールに基づいて整理しましたので、パスポートの残存期間などと合わせてチェックしてください。

ビザ免除期間の変更は見落としがちですが、出発前に必ず大使館情報を再確認することで、空港でのトラブルを未然に防げます。特に「帰りの航空券」を持っていないと入国を拒否されるケースがあるため、事前のeチケット準備は必須です。
ビザなし滞在期間(タイ60日・ベトナム45日)
2025年現在、日本国籍のパスポート保持者は、観光目的であればビザなしで入国可能です。
- タイ: 60日以内(2024年の制度変更により延長されました)。
- ベトナム: 45日以内(パスポートの有効期間が入国時に6ヶ月以上残っていることが必須)。
どちらも短期旅行には十分な期間ですが、ベトナムはパスポートの残存期間ルールが厳格ですのでご注意ください。デジタルノマドなど中長期滞在を検討される場合は、タイの方がビザなしでの猶予期間が長く有利です。
飛行時間と航空券相場
日本(東京・大阪等)からの直行便は両国とも充実しています。
- タイ(バンコク): 所要時間は約6〜7時間。便数が多く、LCCからフルサービスキャリアまで選択肢が豊富です。
- ベトナム(ハノイ・ホーチミン): 所要時間は約5.5〜6.5時間。タイより地理的に日本に近いため、飛行時間が若干短く、体への負担が少ないのがメリットです。
航空券の相場は時期によりますが、距離が近い分、ベトナムの方が若干安価に収まる傾向があります。
ベストシーズンと気候の違い
東南アジアは「暑い」イメージですが、雨季と乾季があります。
- タイ: 11月〜2月が乾季でベストシーズン。雨が少なく、朝晩は過ごしやすい気温になります。今はまさに旅行に最適な時期です。
- ベトナム: 南北に長いため地域差があります。ハノイ(北部)は11月〜3月が乾季で涼しいですが、ダナン(中部)は9月〜1月頃が雨季となります。ホーチミン(南部)はタイと同様、11月〜4月頃が乾季です。
行き先の都市によって天候が大きく異なるため、特にベトナム周遊を考える際はエリアごとの気候確認が欠かせません。
タイ・ベトナムの物価と予算:円安の影響は?
「東南アジアは物価が安い」というイメージがありますが、近年の円安や現地の経済成長により、状況は変化しています。2025年の肌感覚として、どの程度の予算感を持っておくべきか解説します。

「全部安い」と思い込むと予算オーバーになりがちですが、ローカルな屋台や市場をうまく利用することで、出費を抑えつつ現地の味を楽しめます。観光客向けの店と地元向けの店で価格差が激しいため、Googleマップの口コミで価格帯($マークの数)を確認してから入店するのが賢い方法です。
食事代・ビール代の比較(屋台 vs レストラン)
ローカルな屋台や食堂であれば、両国とも一食300円〜500円程度でお腹いっぱい食べられます。
- タイ: 観光地化が進んでいるエリアでは価格上昇が見られますが、屋台のカオマンガイやパッタイは依然として手頃です。ビール(チャンやシンハー)はコンビニで1本200円前後です。
- ベトナム: バインミー(サンドイッチ)やフォーは、ローカル店なら200円〜400円程度。特筆すべきはビールの安さで、銘柄によっては水より安いこともあり、酒好きには天国と言えるでしょう。
ホテル・宿泊費のコスパ比較
宿泊費に関しては、両国ともに日本国内旅行と比べて圧倒的にコストパフォーマンスが良いのが魅力です。
- タイ: バンコクには世界的な高級ホテルが林立しており、日本の半額〜3分の2程度の価格で5つ星ホテルに宿泊可能です。プール付きのコンドミニアム型ホテルも人気です。
- ベトナム: タイよりもさらに割安感があります。特にダナンなどのリゾート地では、驚くような低価格でオーシャンビューの広々とした部屋に泊まれることが多く、宿泊費を抑えたい方には有利です。
移動費(タクシー・Grab・電車)の違い
- タイ: バンコク市内のBTS/MRT(電車)は初乗り数十円〜と安く、渋滞知らずで快適です。タクシーやGrabも日本より安いですが、渋滞にはまると時間が読めないことがあります。
- ベトナム: 電車網(メトロ)は限定的ですが、配車アプリ「Grab」の料金が非常に安いです。バイクタクシーを使えば、市内移動が1回100円〜200円で済むことも。電車がない分、ドア・ツー・ドアの車移動が基本となり、歩く距離を減らせるというメリットもあります。
タイとベトナム、「食」と「文化」で選ぶ体験の違い
旅の醍醐味である食事と文化。ここではスペック比較では見えてこない、感覚的な「相性」について深掘りします。ご自身の好みに合うのはどちらでしょうか。

食事の好みが旅行の満足度を大きく左右するため、パクチーや辛いものが苦手な人は事前に「マイサイパクチー(パクチー入れないで)」などの現地語を画像で保存しておくと安心です。また、現地の文化を尊重する姿勢を見せることで、現地の方とのコミュニケーションが温かいものになります。
【食】パンチの効いたタイ料理 vs 優しい味のベトナム料理
- タイ料理: 「辛味・酸味・甘味・塩味」の複雑なハーモニーが特徴です。トムヤムクンやソムタムなど、刺激的でパンチの効いた味が好きな人にはたまりません。もちろん、カオマンガイなど辛くない料理もあります。
- ベトナム料理: 米粉を使った麺(フォー)や春巻きなど、素材の味を活かしたマイルドな味付けが中心です。野菜やハーブをたっぷり使い、油の使用量も控えめなため、毎日食べても胃もたれしにくいのが魅力。「優しい味」を求めるならベトナムです。
【街】洗練と混沌のバンコク vs 歴史と熱気のハノイ・ホーチミン
- タイ(バンコク): 最先端のショッピングモール、ルーフトップバー、そして黄金に輝く寺院が混在する大都会です。洗練された都会的な遊びと、昔ながらの熱気がバランスよく同居しています。
- ベトナム: バイクの波が押し寄せる「熱気」が最大の特徴です。ハノイは千年の歴史を持つ古都の風情、ホーチミンは経済成長の活気、ダナンは開放的なリゾートと、都市ごとに全く異なる顔を持っています。少しレトロでノスタルジックな風景は、写真映えも抜群です。
【人】微笑みの国 vs 勤勉でエネルギッシュな国民性
- タイ: 「マイペンライ(気にしない)」の精神が根付いており、細かいことは気にしないおおらかな国民性です。店員さんもフレンドリーで、とっつきやすい雰囲気があります。
- ベトナム: 勤勉で上昇志向が強く、エネルギッシュです。商魂逞しい一面もあり、市場での交渉などでは強気の姿勢を見せることもありますが、仲良くなると非常に親切で世話焼きな一面を見せてくれます。
タイ・ベトナムの治安とトラブル対策:安心して楽しむために
どちらも治安は比較的良好な国ですが、日本とは異なる注意点があります。トラブルを未然に防ぎ、楽しい思い出だけを持ち帰るためのポイントを押さえておきましょう。

「自分は大丈夫」という油断が最大の敵です。スリや置き引きは、観光に夢中になっている一瞬の隙に発生します。カバンは体の前で持つ、歩きスマホはしない、夜間の路地裏には入らないといった基本的な対策を徹底することで、被害に遭う確率はぐっと下がります。
タイで気をつけるべき詐欺とマナー
観光地周辺で「今日は寺院が休みだ」と嘘をつき、別の場所(宝石店や仕立て屋)へ連れて行こうとするトゥクトゥクや自称ガイドの詐欺が昔から横行しています。向こうから日本語で親しげに話しかけてくる人には、笑顔で「No, thank you」と伝え、相手にしないのが一番の対策です。
また、寺院では露出の多い服装はNGです。肩や膝が隠れる服装を用意するか、羽織るものを持参しましょう。王室への敬意も非常に重要で、不敬な言動は法律で罰せられる可能性があります。
ベトナムの交通事情とスリ対策
ベトナム観光の最大のハードルは「道路横断」かもしれません。絶え間なく流れるバイクの波を渡るのはコツがいりますが、一定の速度でゆっくり歩き続ければ、バイク側が避けてくれます。急に走ったり立ち止まったりするのが一番危険です。
また、人混みでのスリや、タクシーでのぼったくりにも注意が必要です。流しのタクシーではなく、料金が明朗な配車アプリ「Grab」を利用することを強くおすすめします。
両国共通:水・衛生・感染症対策
水道水は飲めませんので、必ずミネラルウォーターを購入してください。歯磨き程度なら水道水でも大丈夫な場合が多いですが、お腹が弱い方はミネラルウォーターを使うと安心です。
また、デング熱などの蚊を媒介する感染症のリスクがあります。都市部でも蚊はいますので、虫除けスプレーやローションは必須アイテムです。現地でも購入できますが、使い慣れたものを日本から持参すると良いでしょう。
よくある質問(Q&A)
旅の準備を進める中で、ふと疑問に思う細かいポイントをQ&A形式でまとめました。出発前の最終確認としてお役立てください。
Q1. 日本の電化製品はそのまま使えますか?変圧器は必要?
A. 最近のスマートフォンやカメラの充電器は「全世界対応(100-240V)」のものが多く、その場合は変圧器は不要です。ただし、コンセントの形状が異なる場合があります。
- タイ: 日本と同じAタイプと、丸ピンのCタイプが使える複合型が主流です。日本のプラグがそのまま挿さることがほとんどです。
- ベトナム: Cタイプ(丸ピン)が多いですが、Aタイプも使える場所が増えています。念のため、変換プラグ(Cタイプ)を1つ持っていくと安心です。 ※ヘアアイロンなど高電圧の機器は、海外対応でない場合、変圧器が必要です。
Q2. チップを渡す習慣はありますか?
A. どちらも本来はチップ文化のない国でしたが、観光地では習慣化しつつあります。
- タイ: レストランでサービス料が含まれていない場合や、マッサージ店、ホテルのポーターには20〜50バーツ程度(約100〜200円)を渡すのがスマートです。
- ベトナム: 基本的に不要ですが、高級スパや良いサービスを受けた際に、少額(2万ドン〜5万ドン程度)を渡すと喜ばれます。タクシーのお釣りの端数を渡すのも一般的です。
Q3. 英語はどのくらい通じますか?
A. 観光エリアであれば、どちらも旅行に必要な英語は通じます。
- タイ: 観光立国だけあり、ホテル、レストラン、屋台でも簡単な英語が通じやすいです。
- ベトナム: ホテルやツアーデスクでは問題ありません。タクシー運転手やローカル食堂では通じにくいこともありますが、翻訳アプリを使えばスムーズに意思疎通できます。
Q4. 両替は日本でしていくべきですか?
A. いいえ、日本での両替はレートが非常に悪いためおすすめしません。現地の空港に到着してから少額を両替し、残りは街中の公認両替所で換金するのが最もお得です。また、クレジットカードのキャッシング機能を使ってATMから現地通貨を引き出すのも、レートが良い場合が多く便利です。
Q5. トイレに紙は流せますか?
A. 基本的には「流せない」と考えておいた方がトラブルを防げます。 配管が細いため、使用したトイレットペーパーは便器の横にあるゴミ箱に捨てるのが一般的です。ただし、空港や新しいショッピングモール、高級ホテルでは流せるところも増えています。個室内の表示を確認しましょう。
まとめ:旅の準備はここから!素晴らしいアジアの旅へ
タイとベトナム、どちらも独自の文化と魅力が詰まった素晴らしい国です。
エンターテインメントと快適さを求め、初めてのアジア旅行を不安なく楽しみたいならタイ。 どこか懐かしい街並みの中で、雑貨巡りや優しい食事に癒やされたいならベトナム。
どちらを選んでも、日本では味わえない熱気と、現地の人々の温かさがあなたを待っています。この記事でご紹介した情報を参考に、パスポートの有効期限を確認し、航空券を検索することから旅の第一歩を踏み出してみてください。
あなたの旅が、安全で発見に満ちた最高のものになりますように。

